塗装に使用するシンナーの種類・注意点
外壁塗装や屋根塗装などの塗装工事をする際に、油性(溶剤)塗料を使用して塗装する場合には、希釈剤としてシンナーを必ず使用する事になります。
希釈とは=塗料を溶かして薄めるという事です。
シンナーには塗料と同じくさまざまな種類があり、使用する塗料の種類や製品、その作業状況によって使い分けをする必要があります。
今回は塗装に使用するシンナーの種類や注意点などについて紹介いたします。
シンナーとは
シンナーは英語で「thinner」と書きます。
「thin」は薄めるという意味を持ち、その名の通りシンナーは塗料を薄める液体です。
シンナーには数種類の有機溶剤が混合されており、種類はさまざまです。
シンナーを使い塗料を薄めるの?
塗料の原液は粘土が高く、そのままの状態で塗装をしてしまうと塗料が塗りずらく、塗装ムラができやすかったりしてしまいます。
更に塗料は温度や保存状態によっても粘度が変わってしまう為、塗料のメーカーの規定値の範囲でシンナーを使用し希釈(薄めて)して塗装する必要があります。
下記は塗料カタログの写真です。
注意)メーカーの規定以上で希釈してしまうと本来持つ塗料の効果が発揮できなくなります。
シンナーを使用する事によってのメリットは大きく2つ
①塗装の仕上がりが綺麗
塗料を適正な値まで希釈する事で、塗料の仕上がりが綺麗になります。
塗料の粘度が高いと刷毛ムラやローラームラができやすくなり、経験のある職人でも綺麗に仕上げるのは困難になります。
逆に塗料の粘度を下げ過ぎると、塗料のダレや飛散が多くなってしまいます。
②作業効率の向上
塗料を適正な値まで希釈する事で、塗りやすくなり作業スピードが上がります。
塗料の粘度が高いと塗料の伸びが悪くなり、塗る時のスピードが落ちてしまいます。
又、刷毛ムラやローラームラができてしまう事により、手直しの量が増えてしまい時間が更にかかってしまいます。
粘度を下げ過ぎても同様に、ダレや飛散が発生すると手直しや掃除に時間がかかってしまいます。
シンナーの種類
塗料の種類や製品によって使用するシンナーは変わります。
ここでは代表的なシンナーの種類を紹介します。
塗料用シンナー
塗装工事で最も使用頻度の高いシンナーになります。
油性(溶剤)塗料の弱溶剤に使うシンナーのほとんどが塗料用シンナーになります。
ホームセンターでも販売されているシンナーで「ペイントうすめ液」として売られています。
脂肪族炭化水素を主成分としたもので、ラッカーシンナーと比べると乾燥が遅く、溶解力や臭いも弱いもので、比較的扱いやすいシンナーです。
塗装道具の洗浄や掃除の際にも使用する場合も多くあります。
ラッカーシンナー
塗装工事で2番目に使用頻度の高いシンナーとなります。
ラッカー塗料を使用する際に使うシンナ―ですが、近年は弱溶剤塗料が主流になっている為、塗料の希釈で使用するケースはほとんどありません。
塗装用シンナーでは取る事のできない汚れの掃除や塗装道具の洗浄用として使用する事が多いシンナーです。
ラッカーシンナーもホームセンターにも販売されてるシンナーで「ラッカーうすめ液」として売られています。
エステル、ケトン、アルコール、芳香族炭化水素(キシレン、トルエン)を主成分としたもので、塗料用シンナーと比べると、乾燥が早く、溶解力も臭いもかなり強くなります。
非常に強いシンナーになる為、取り扱いには十分に注意しなければなりません。
各種専用シンナー
使用する塗料によって上記2つのシンナーとは違い塗料に合わせた専用のシンナーを使用する場合があります。
塗料の主成分である合成樹脂によって変わります。
下記表は塗料に使用する各種専用シンナーになります。
塗料種類 | シンナー種類 |
ウレタン樹脂塗料 | ウレタンシンナー |
アクリル樹脂塗料 | アクリルシンナー |
エポキシ樹脂塗料 | エポキシシンナー |
専用シンナーを使用しなければならない場合、どのシンナーを使用すべきか塗料の仕様書に必ず記載されています。
シンナーではなく水
上記、各種シンナーは油性(溶剤)塗料に使用しますが、水性塗料の場合はシンナーの代わりになるものが水となります。
水性塗料にシンナーを代用しても分離し、塗料を希釈する事はできません。
シンナー使用時は希釈率を守る
それぞれの塗料製品には塗料メーカーの仕様があり、希釈剤として使用するシンナーは決まっています。
「このシンナーでいいや」などのシンナーの代用は絶対にしてはいけません。
その塗料に使用できるシンナーで希釈しなければなりません。
塗料の仕様と異なるシンナーを使用した場合、その塗料は各種メーカーの出している塗料ではなくります。
【塗料の原液+希釈剤(使用に記載されているもの)=塗料】になります。
塗料の仕様と異なるシンナーで希釈すると、塗料の分離、塗膜の効果不良、塗膜の剥がれ、色の変色、耐久性の低下などさまざまなことが、考えられます。
塗料本来の持つ効果を実現させる為には、仕様通りの希釈をしなければなりません。
※塗料の希釈を間違え、施工不良が起きてしまうと、やり直しする際には、剥離作業から施工する事になり費用が余計に掛ってきてしまいます。
シンナーの注意点
シンナーは決して人体に良いものではありません。
シンナーにはさまざまな有害物質が含まれており、取り扱いには注意が必要になります。
下記3つは覚えておきましょう。
①しっかり換気
シンナーは人体に影響する有機溶剤です。
風通しの悪い場所などは、換気をしっかり行わないと、有害物質を鼻や口から吸いつづけ、体調が悪くなったりしてしまう可能性があります。
シンナーを取り扱う時は適度な休憩をとる事が必要です。
②火気厳禁
シンナーなどの有機溶剤は引火性があります。
シンナーの取扱説明にも記載されていますが、火気厳禁です。
完全に乾燥するまでは近くで火は必ず使用しない様にしましょう。
③処分方法
シンナーは決して排水溝に捨ててはいけません。
排水の汚染、排水管へのダメージを与えてしまいます。
少量のシンナーの場合は、いらない布や、新聞紙に染み込ませ、乾燥させた後に燃えるゴミとして捨てます。
大量のシンナーの場合は、シンナーのメーカーか専門業者に相談するようにしましょう。
まとめ
今回は塗装に使用するシンナーの種類や注意点などについて紹介いたしました。
シンナーには有害物質が含まれており、取り扱いには十分に注意しなければなりません。
塗装する上で大事な働きをするシンナーには塗料と同じくさまざまな種類があり、使用する塗料の種類や製品、その作業状況によって使い分けが必要です。
適正にシンナーを使用する事で、失敗しない塗装を実現する事ができます。